花鳥図硯筥298*328*H110
村上木彫堆朱最高峰の一つである「花鳥之図」の硯筥です。図案枠の外側には天面から側面にかけて「牡丹天平唐草」も施されています。作り手の故稲垣豊秋氏は、主に三彩彫(*1)を制作されていました。三彩彫で研鑽を積まれた巧みな彫りは、木彫においても如何なく発揮され、細部にブレがなく繊細で美しい作品になっています。拡大画像は、地紋(*2)と図案の境目ですが、まるで地紋を彫った後に別途彫った図案部を重ね貼っているかの様に見えます。制作手順は、まず地紋の部分を掘り下げ、平にしてから地紋を彫り、次に図案部を彫ります。同じ地紋が飛び地にある場合も地紋が全体にあるかのごとく連続しているそうです。にわかには信じがたい絶技です。村上木彫堆朱の奥義が詰め込まれた逸品です。
*1)三彩彫木地に朱、黄、緑、黒などの色漆を塗り重ね、最後に黒を塗って磨き上げ、その後、彫刻刀で文様を彫り出すことで、彫り込んだ部分に下層の色が現れる漆工芸の技法です。繊細な彫刻と色漆の鮮やかな対比が特徴で、写実的な図案が多く用いられます。
*2)地紋山水図、花鳥図には、地紋があります。図案に合わせて七宝菊、青海波(せいがいは)、網代(あじろ)、雷(らいもん)など図案の合間に施されています。また、地紋は、図案中の花、蝶々、瓢箪などに施された格調高い作品も制作されています。