大室桃生


一点一点、型を造り、型を壊し取り出します。たいへん手間が掛かるため、現代の作家には、好まれず、この方法での作品造りは稀です。石膏でフォルムの反転型を作り内側から模様を削ります。模様に粉や粒状の色硝子を入れ、窯で焼き溶かし、レリーフ状の作品となます。本作は、レリーフに銀の焼付けを行い、アクセントにしています。粉や粒状の色硝子が溶け合った景色は、色の繋がりが生まれ、水彩画のような柔らかさと発色の良い色合いとなっている作品もあります。表面を研磨して仕上げるので、胴は艶消しとなっています。石膏と硝子が融合している所は、白粉をまぶしたような景色になります。この艶消しや白粉が使い込む事でしっとりとした艶になるそうです。正に「育つ」硝子です。また、硝子の最大の特徴である透明部は、見込みを通して見えます。胴の厚みの中に細かな斑入があり(写真中央下)、器を持ち上げた時、光が通り、美しい層が現れます。吹き硝子が 轆轤 ならば、本作は、手捻り に似た印象を持ちました。不規則な表面が、指肌に溶け込む感覚です。頃よい重さが心地良く、唇あたりも柔らかです。呑み心地のたいへん良い作品です。*パートドヴェールという技法は、あまり耳慣れない言葉かもしれませんが、フランス語で、「ガラスの練り粉」という意味だそう。耐火型に、砕いた粉や粒状のガラスを詰め、窯で焼き溶かし、完全に冷えたところで型を壊して成形されたガラスを取り出して、研磨して仕上げるというガラスの鋳物技法のひとつです。1992年武蔵野美術大学工芸工業デザイン学部金工科卒

酒呑

 65*65*H55
硝子の中の斑が景色に深みを出し柔らかな印象を受けます。隆起した模様に施された銀彩がアクセントとなり他の色模様作品とは一線を画す作品となっています。