石井隆寛


長い時間をかけて焼くことで、そこにいろいろな要素が入ってきます。時間をかけて焼いた陶器は、深さや奥ゆきがあります。道具や機械を媒介することなく、人の手のみを使って形を生み出す陶芸ほど、つくり手の内面や意識が反映されます。陶器は眺めるだけでなく、手にとったときにこそ「ああ、これはいいな」と説明の難しい“何か”が伝わってきます。手の平を伝わって感じられることは、表面的なことを言えば質感や重さということになるのだろうが、それだけではない“何か”というものは必ず存在すると信じています。《作りての背景》大学卒(彫刻科)業後、備前焼の名陶工である隠崎隆一氏に弟子入り、修行8年。備前焼の文化、伝統技法を基礎として自然釉と釉薬による表現を追求。備前の原土に鉱物、酸化金属、釉薬を組み合わせ、時には二度三度と焼成し今までの備前焼にはない、独自の表現方法を目指して作陶。

青釉茶

146143H82
柔らかな植物的造形と見込み、胴、の景色の”美力”に魅せられました。独特の造形は、大胆な造りでいて、たいへん持ち心地が良いです。大きく広がった見込みは、大らかな柔らかさがあり、温かみを感じます。青釉の織り成す景色は、見込み、胴とも繊細で、銀彩のアクセントが、妖艶な美しさを醸し出しています。