小園敏樹

- 鎌倉彫 -

隠れ家工房 “ 青樹庵 ”


作り手語録世の中の物離れの向かい風に負けず使い手の思いに正面から向かい合っていきたいと思います。」「木と漆の素材に向き合い彫刻や漆塗りの仕事を通して使い手に幸せをお届けしたい」(内封書)
1958年鎌倉生まれ。青山学院大学卒。造形作家斉藤寿一氏、彫刻師佐藤広佐氏に師事。1983年より鎌倉彫の家業を継ぎ、小園漆工房にて木工、漆工、彫刻を修行。2004年に伝統工芸士認定2005年に鎌倉山に「隠れ家工房“青樹庵”」設立。鎌倉彫創作展など多数受賞。国内デパートや海外の展示会にも精力的に多数参加。

刀波文 小判筥

210*110*H70
ダイナミックな刀波文は、単に木工芸の造形ではなく、波面の中に鎌倉彫特有の彫り跡を配しています。
鎌倉彫で行われている漆工は、塗って研ぐを繰り返す事で彫り跡に陰影が生まれ、古色かかった落ち着いた色合いとなります。
美しく広がる波の稜線と彫り跡の陰影が相まって、一層深い味わいを感じます。
作り手の鎌倉彫伝統工芸士としての誇りと拘りが詰まった作品からは、全ての作品に同様に向き合う姿勢と鎌倉彫愛を強く感じる事ができます。
本作品と作り手に出会えたご縁に感謝します。

鎌倉皿 -2022- 栗の手

8寸 (24.2424cm)
2022年度新企画「正子のティータイム『鎌倉皿展』」の出品作品です。縁の柔らかな凹凸と中心に向かい彫られた弧が美しく、全体で「花一輪」となっています。鎌倉彫慣例の花図案と違う視点からの花を表す造形に感じ入りました。平面部も多く、企画題名でもある「皿」としての機能も十二分の作品です。仕上げは拭き漆で木目の美しさが際立っています。用の場においても縁の造形は、皿にのせる物に隠れないので美しさが損なわれる事がありません。作り手の熟考が見て取れます。美しい彫りや漆工は言わずもがな、用の物としての機能や場での姿を重要な要素として制作されています。企画展は、鎌倉彫伝統工芸士の力量を示す場でもあります。美しい巧だけでなく、熟考された構成や趣意が伝わる作品を発表する場であって欲しいと願っています。

合鹿椀

Φ152*h 108*高台h32
分業制が主流の鎌倉彫ですが、本作は、作り手が削り出し、鎌倉彫特有の美しい刀痕と布貼りの布目が現れない程の丁寧な漆仕事が施され、深みのある色合いの景色となっています。例え何らかの原因で破損が生じたとしても「手で作った物は直せる」と言われていました。小園さんのお嬢さんは、幼い頃から合鹿椀を使い、嫁入りの際は漆を整え、お供として持参されたそうです。
[合鹿椀]床に置いた状態で、食事が出来るように、通常より高台が高い特有の形で知られる。石川県能登町(旧柳田村)の合鹿地方でつくられる漆器椀が始まり。
〈余談〉子供の頃、祖母が作ってくれていた味噌汁は、根菜類、緑黄色野菜、魚介類、豆腐が、ほぼ全種類何かしら入っている具沢山味噌汁でした。自宅仕事の私は食事担当ですが、具沢山味噌汁は「味噌汁だけで満腹になって、他のおかずが食べれない」と家族に言われるので、家族向けには具をニ種類までにしています。還暦を過ぎて時折、一汁のみの食事をしていますが、家族との食事の汁椀では小さいので、どんぶりではない大きな汁椀を探していました。合鹿椀は画一的な物が多いですが、本作は鎌倉彫の美しい刀痕による個性豊かな合鹿椀です。作り手の小園さんは「まだ、道中ばで、まだまだです。」と言われ、その職人魂にも関心しました。出会ったご縁に感謝しています。