鈴木秀昭


細密画のようにほどこされた緻密な紋様。落ち着いた色と、金のようにきらびやかな色が融合しあった色彩に目を奪われる。陶芸界では変わり種といえるかもしれない。陶芸に囲まれて育ったわけでもなく、大学はアメリカへ留学、社会学を学んだ。その間ずっと陶芸には無関心だった。卒業後、どんな職業に就こうかと迷ったとき、彫刻家の兄に勧められて陶芸家になる。焼物を学ぶうちに、前衛的な陶芸に興味を持つようになり、アメリカの芸術大学の大学院へ進み、アートとしての陶芸を学んだ。(HPより抜粋)

極光天球盃

8080*H39
鈴木作品としては珍品と言える。緻密な紋様を常としているが本作は紋様が流動的な景色となっている。細かな彩色により宇宙をテーマにした宗教観を感じる作品を生み出す。本作は、多重焼成により、景色が溶け合い造形も変化が生まれた。今までの作品とは、景色から受ける陶力が異なる。硝子工芸のような金箔や銀箔、色彩の景色の美しさに目を奪われた。今までの細かな、景色の積み重ねも楽しく美しいが、本作の混ざり合う深い景色と動きのある景色は、私好みだ。見込み、胴、全ての面に境の無い同等な深みのある陶力を感じる。特に見込みの複雑な隆起は、彩色と相まって潤いに煌めく。光溢れる煌びやかな景色。実に美しい。正に“極光天球”