鈴木元子

- 漆芸家 香川漆器

香川漆器は独自で発展させてきた3種の技術(*1)を駆使し、時には融合させ表現する彫の漆芸です。

特に「蒟醬(*2)」は表面的な景色ではなく、内側に広がる深度の工夫により重厚な景色を生み出しています。

作り手は「技術は景色を生み出すためにあるので作品の評価にはならない」と言われていました。

しかし、その景色は、他の漆器とは別次元の景色となっている事は、作品が雄弁に語っています。

香川漆器の特質すべき技術は、香川漆器のみの技術です。

「もし展覧会等でこの技術を施されている作品をご覧になったら、それは香川漆器です。」と言われていました。

画像には現れない深い景色を実作品にてご覧いただきご堪能頂きたいです。

日本工芸会正会員

1981年 岩手県盛岡市出身2004年 東北芸術工科大学 漆芸専攻卒業2004-2007年 香川県漆芸研究所 修了2007-2010年青森県弘前市にて藤田正堂氏に師事2010年 宮城県黒川郡大和町にて制作活動開始日本伝統工芸展入選日本伝統漆芸展入選東日本伝統工芸展入選第50回東日本伝統工芸展岩手県知事賞受賞第61回東日本伝統工芸展東京都知事賞受賞
日本工芸会HPhttps://www.nihonkogeikai.or.jp/作品掲載頁:作家検索/鈴木元子
*1:江戸時代後期に、玉楮象谷が、「蒟醤(きんま)」、「存清(ぞんせい)」等タイや中国から伝わってきた漆器技法を研究し、それらにわが国古来の技法を加えて新しい技法を生み出したことから始まりました。その技法を受け継いで、現在香川県の高松市を中心に、特色のある漆器が数多く生産されており、それらを総称して「香川漆器」と呼んでいます。出典:香川県HP/香川県漆芸研究所「香川の3技法」https://www.pref.kagawa.lg.jp/shitsugei/sitsugei/technique/kfvn.html*2:蒟醬(きんま)/ 塗り重ねた漆を蒟醤剣で文様を彫り込み、彫り込んだ溝に色漆を埋め、表面を平らに研いで余分な色漆を取り除き、意図した文様を表現する技法。

乾漆蒟醬カップ

83*83*H114 
泡のような模様と表面の光沢相まって神秘的な深みを感じさせます。地色の滑らかなグラデーションは、蒟醬ならではの景色と言われていました。本作は乾漆(*1)により造形され、漆の層に図案を彫刻しています。絵柄の彫りに色漆を挿し乾燥させ磨きます。多くの時間と根気が注がれた景色は、景色に深みを感じる要因となっています。
1造形の基本形状を作り、それに麻布を貼り重ね漆を重ね塗りします。香川漆器の場合は、彫りの深さに伴って漆と磨きの繰り返しの回数が増えます。