三原 研


1958年、島根県出雲市生まれ。 大学時代に陶芸に出合う。1981年、舩木研児氏に師事。 1983年、独立し、宍道町に工房

炻器ぐい呑

6567*H50
炻器は釉薬を使わない青灰色の生地が特徴。土を重ね塗りし焼成した後、外側の土を剥がし取る手間とかなりの労力がかかる作陶エッジの効いたモダンなフォルムは海外でも高く評価されている。独特のカセた陶肌は、発掘した陶器のような、自然の力と相まった景色に見える。強い陶力を感じる作品である。机に置いた瞬間、机との間に緊張感の有る美しい空間が現れる。腰の美しい切れの有るラインが際立ち、浮いているような緊張感がある。面の軸が三次元的に変化する胴造りは、紡錘形の腰から楕円形の口縁への変化の中に、鋭利な部分と大らかな張りのある面との切り替えを盛り込んだ複雑で美しい造形。品のある色合いと相まった変化に富んだ景色を見ることができる。内側は、楕円形の口縁から円形の見込みへの淀みの無い美しい面の変化の中に、広がりのある空間を感じる。角度によりその広がりに変化があり、造形全体に隙が無い。お酒に潤うと、色合いが深まり、コントラストが美しい。プリミティブな口造りは、胴部と内側の緊張感のある面の造りを和らげている。持ち心地は、表面の整えられた細かな隆起と底面に指がかりが良く、手にしっくりくる。ぐい呑という小さな造形作品は、作者の持つ造形センスと技術、炎を掌握する力量が凝縮され、表現する作品だと考えている。