螺鈿流水紋六角酒器70×H55
本作品の螺鈿は、点在する螺鈿も含め、流水紋(豆知識1)の流れが途切れる事なく繋がっています。自然物である貝の模様は、意図通りの紋様になっているわけではありません。作り手の観察眼と審美眼を感じる作品です。漆工も細部まで丁寧に仕上げてあり螺鈿の美しさを引き立たせています。
《作り手談》流水紋の螺鈿は、鮑の模様をそのまま切り出してパーツを作っています。その幾つもの模様を複数の鮑から集めた後に、流れを想像して再構築しています。また、今回の酒器は螺鈿流水紋を施すことを考えた上で六角形状にしています。自然の中にも六角は多く形成される形であり、水との親和性も高いと想像して作った形です。漆芸は時間の掛かる工芸です。他の工芸でも構想段階での熟考の重要性は共通していますが、漆芸の中でも蒔絵や螺鈿などの加飾や香川漆芸(彫漆、等)などは、特に多くの工程と一つ一つの工程に時間がかかるため、手作業に着手する前に深い熟考が必要です。本作品は、明快な意図を持って作られおり、その意図を感じ取れる作品となっています。螺鈿の濃淡や煌めきを伴う流水紋の流れが、実に美しいです。初めての螺鈿作品が「螺鈿流水紋六角酒器」となりました。ご縁に感謝しております。
【豆知識1】「流水紋」とは、水の流れを抽象的に表現した日本の伝統的な文様で、清浄、魔除け、家運長久などの願いが込められているそうです。愛でたい紋様です。