東金聖(トウガネヒジリ)東京都出身の陶芸家・美術作家です。幼少期をイギリスで過ごし、アメリカの美術大学で彫刻を学びました。卒業後は現地で大型陶彫のアーティストとして活動し、日本帰国後は岐阜県多治見市に移住して陶芸作品の制作も行っています。代表作に等身大の陶磁製人体彫刻があり、伝統技法を現代アートに昇華させた華やかな器作品も国内外で高い評価を得ています*AI による概要 刻む、継ぐ、揺らぐ
会場には煌びやかで繊細な作品群が展示されており、その美しい世界観に引き込まれました。会場に居られた東金さんにお話を伺うことができました。Instagram、Vogue等で掲載された文章も一部引用要約してご紹介いたします。基本技法は、美濃焼の伝統技法である泥漿鋳込(型)技術「ガバいこみ」を現代に蘇らせる試みにより造形されているそうです。加飾の細かなパーツも同様に作成し基本体に組込まれています。型物と言っても量産を目的とした作りではありません。作りが複雑な上に加飾も細部に至るので1点物として手作りにこだわって制作されています。1点に盛り込まれた細かな造作、仕上げの多様さ、美しさは唯一無二の領域です。心を揺さぶられました。作品群の表現は、鑑賞者の心に直接届く理解しやすい構成です。作りたい作品を制作する「自分本位」の制作ではなく「芸術は鑑賞者とともにある(*1)」という考え方に基づく制作と言えます。アメリカの大学で学んだアートの影響を受けていると思われます。<*1:「全ての芸術は、鑑賞者によってその存在意義を大きく左右される」と言う芸術論>また、付加価値の表現は「用の美」と「芸術的な美術品」の間(ハザマ)に可能性があるという考えをカップと装飾という構成で具現化されています。「なぜ陶芸を?」「後世に長く残る作品を作りたい」という想いの中、多彩な表現ができる美濃焼と出会った。苦難の時に陶芸によって救われ、今の自分がいる。自分が陶芸に救われた様に作品を通して、鑑賞者が前向きな何かを感じていただけるのなら、それが恩返になると考えている。人が「美しい」「欲しい」「触れてみたい」と感じることでこそ、技法は次代へとつながる。作品を通して、鑑賞者が伝統技法の魅力に触れ、未来への継承を考えるきっかけとなれば幸い。(要約)<本作品群の芸術・美術的価値は、用の美、侘び寂びとは対局になりますが「美濃焼」と謳っている事から二つの価値に相乗効果があると思われます。>「目指す作陶について」作品が注目され、購入される事で多くの人々に知れ渡る事、同時に唯一無二の世界観を確立する事が当面目指す事。その先は、初志でもある「後世に長く残る作品」として美術館に所蔵される作品を作りたい。(要約)<拝見した作品、作り手の雰囲気、言葉の強さ、情熱、行動力、等々から、このビジョンは高い確立で実現されると確信しています。>工芸愛好家として工芸を勉強してきた中で、高名な作り手からも作品に限らず多くのお話をしていただきました。共通していると感じた事は、作り手それぞれの工芸界の発展を担う「使命感」を持たれているという事です。手がける表現に留まらず、常に進化の方向性を探りながら研鑽を重ねて制作することが、在籍する工芸界の底支えとなる事を願っておられます。個展も含め活動し続ける事で業界の活気が失われないようにされています。また、作り手が育つ環境を整える事に尽力されています。東金さんのお話からも同様な「使命感」を感じました。唯一無二の作風は、生み出し続ける才能、継続する体力・気力、育てる環境、等々、それらを支える家族を含めて多くの方々の尽力が必須です。思いつきや勢いだけで存続し続けるのは不可能な工芸界において「使命感」を持ち貫き通すのは並大抵な事ではありません。加えて言えば「使命感」を力に換える事ができる作り手のみが、この領域の作り手になれるのではないかと思います。《余談》日本では、陶芸家の「用の美」個展が開催されますが、陶芸大国である欧州では「用の陶芸」は食器扱いで個展は皆無だそうです。近年、日本の「伝統工芸品」が欧州で受け入れられているのは、日本文化ブームの流れという現状は否めないと思っています。作り手として欧州で認められるには、文化を超越した作品群で価値を生み出す事が必須のようです。