松永圭太


陶芸家のご両親の元、岐阜県多治見市で生まれ育ち、大学では建築を学んだ陶芸家斬新な作陶のアプローチに驚かされます。一方、従来ある技法も研鑽を積み新たな景色を生み出す、本人は物静かな印象ですが、真面目で貪欲な作陶姿勢に感服します。

蛻(モヌケ)

- 層象 -

118180*H108
層象の研鑽を積んでいる初期に蛻に用いた作品です。多くの失敗の末に生み出された景色。

層象

- ぐい呑 -

81*64*H52 72*59*H51
釉薬を練り込みむ「層象」誕生前夜のぐい呑みです。新作誕生の過程では、様々な研鑽が積まれます。この景色の激しさは「ゴジラ」の如く!整えて「層象」となりました。

層象

- 炭化ぐい呑 -

70*68*H43
釉薬を練り込み、炭化焼成したぐい呑です。焼成時の収縮差により割れが生じ、それを意図して景色とした作品。焼成具合で赤みの景色も生まれています。

層象

- 茶 -


釉薬を練り込んだ土を薄引きし、造形に手を加えています。焼成で崩壊する限界域での作陶は作品から緊張感を感じます。窯変により薄紅紫になった景色から気品を感じる作品となっています。
- cave - 転写酒呑70*69*H60
転写作品(蛻/線、甲)は転写だからこそできる景色となっています。転写の多くは平滑な面に絵付けする手法ですが、本作は造形や表面のマチエールと融合した景色となっています。手描きでは出来ない景色です。
馬上盃 70*70*85
馬上盃の名称は、武将がバランスをとりにくい馬上でも酒が呑めるように高台を長くし持ちやすいようにした事から付いたと聞いています。西洋、英語圏では馬上でお酒を呑む文化が無いのか長い高台は英語で「stemmed(ステム=茎、脚)」と訳されていました。ステムの観点から松永馬上盃を見ると植物の茎の張りのある柔らかさと木工家具の温かさを感じる作品です。馬上盃と言う作品名に違和感を感じていた答えがここにあります。
- void -湯呑
自然物のような景色は圧巻です!この艶消し具合が一層自然物感を引き立てます。長石自体を泥漿にし、原土の泥漿とマーブル状に流して作っています。泥漿は型物ですが、そこは松本作品、技法の真髄を見極め、たいへん手間のかかる工程により泥漿の揺らめきを捕らえています。艶消し具合が自然物の侘び感を醸し出しています。
yunomi - 砂漠のゼブラ - オブジェ
本作は湯呑を模し高台も造形されたオブジェです、器ではありません。磁土と長石をブレンドした独自の土で造形し、ゼブラ模様のシートを転写し焼成した作品です。長石の塊が磁土泥で満たされた湯呑の中に閉込められています。長石を志野釉としてではなく単味で景色とする作品は拝見したことはありますが、内部に閉じ込めた様を景色とする作品は初めて拝見しました。長石が人の手で作られた造形や景色を破壊した様は、鉱石の煌めく美しさには人智を超える力がある事を実感できるオブジェです。用の美とは対局にある作品ですが、陶芸の原点である自然物の恵みを強く感じる作品と思いました。会場に用の物が並ぶ中、違和感なく並んでおり、手に取りその重さに驚きました、笑。全ての松永作品に垣間見る、慣習に囚われない美的直覚を感じる事ができる作品です。