泉田之也


何かを創ろうとする時、薄さや荒さ、儚さという方向に向かい、緊張感や軽みに答えを求めます。紙と土はそれらを代弁し、前者は無限の形を、後者は豊かな貌を見せます。紙を無意識に折ることによって出会うであろう景色はなつかしい原風景にも似て、その場に立つような錯覚にさえ捉われます。その時いつも覚える感覚、それは重さからの解放であり、潜在意識からのメッセージと受け止め、全力で形にしたいと願うのです。自我にある混沌とした情景を土の粒子と化し、一枚の紙のごとくならべ、あるがままに変化させた土の形は、内にあるあらゆる経験を内包し時の流れをそこに留めます。私にとって、それは軽みの風景そのものであり、かすかな風が流れるのを感じられ、心が少し軽くなるのです。作り手HPより抜粋)
ぐい呑A 56*49*H46
代表的な造形要素が小さな器に盛り込まれています。自然物のような紙状の造形は植物の化石のように成長の波動を感じさせます。個展会場は中国茶の単叢(*1)を扱うお店でした。永々と生命を継ぐ茶葉の茶を飲む茶杯としても十二分に呼応できる器となっています。
(*1)樹齢百年以上の茶木一本から取れる茶葉
ぐい呑B67*62*H60