山崖松堂

- 漆芸- 


漆だけで成形する「芯漆」という、時間と手間がかかる技法。「芯漆」技法で制作した作品は、木地を使った漆器とは異なり、千年後、一万年後でも、世界の異なる天候や自然環境を問わず、経年劣化しません。漆の耐久性は、化石として発見される琥珀と同じ性質を持ち、天然の高分子化合物で、塩分やアルコールに強く、防水、防腐性もあり、電気を絶縁するなどの特性を持ちます。漆は熱・酸・アルカリに強いだけでなく、ガラスや陶器を溶かすフッ化水素、金を溶かす王水でも溶けません。また、固まると液体に戻ることもありません漆は、科学的に最も安定している有機物の一つです。「芯漆」は漆器制作で最も重要となる漆の本質を深く理解することで誕生、「永久不滅」を概念にした技術です。しかし、幾度も漆を塗り乾かし、彫る工程があるため、「芯漆」作品の制作期間は8年から最長23年かかります。(作り手ブログ「芯漆」より抜粋)

脱乾漆ぐい呑

 66*66*H49
鮮やかに現れたアマルナブルーと脱乾漆特有の肉厚の佇まいから、ゆったりとした気品を感じる。見込みに渦巻く銀河の流れは、まるで、見込み奥の彼の地へ引き込まれているよう。胴は、漆の削り・磨き手法により、複雑で細かな流れのある景色となっている。所々漆の層が深く立体的になっていて景色に重厚さを与えてる。

酒器

 53*53*H46  *2024.2月クラウドファンディング出品作品
本作品は、能登半島地震の象徴的な地域でもある輪島市の作り手が開設したクラウドファンディングに出品された作品です。震災で母家も作業場も倒壊した中から救出された逸品です。
胴には絵画のような折り重なる景色、見込みには煌めきを含んだ暖かで美しい景色など、見せ所満載の作品です。改めて松堂漆の作品力を感じました。
漆工芸には、美意識、技術力に加え、完成イメージに到達するまでに多くの工程を貫徹する、忍耐力、精神力が必要と聞いています。
本作品は小さな酒器ですが、その月日を十二分に感じる事ができる逸品となっています。

朱盆 


経年の味が出る技法